とりをあつめて

窓を開ける、近所を歩く

とりをあつめて(その40)

「ワシのマーク」

1月に長崎を訪れた際、慣れない移動にくたびれていたところ、ホテルの自販機で見つけた鳥。栄養ドリンクなんて、何年ぶりのことでしょう。祖母が昔、ことあるごとに「チオビタあるよ」「リポビタンあるよ」「オロナミンシーあるよ」と言っていたのを思い出します。

さて、大正製薬のホームページによると、初代「ワシのマーク」が制定されたのは1955年のこと。以来、現在のデザインに至るまで、何度か細かな更新がされているようです。初代のワシも現代のワシも、頭部と翼の一部が白いというのが共通の特徴で、これはどうも、ハクトウワシをベースにしたのではないかと想像します。そして、そこに少しだけオオワシの感じも見受けられます。

そもそも「ワシ」と聞けば、大半の人が、このマークの鳥に近いイメージを抱くのではないでしょうか。でも実際に、生活圏で野生のワシを見かけるような機会は、ほとんどの人にとって、滅多にないものだと思います。特にハクトウワシに関しては、野生では国内におらず、動物園にいるのみです。「見たことはないがイメージできる鳥」――ワシというのは、なかなか不思議で面白い存在です。

ちなみにハクトウワシは、アメリカの国鳥であり、国章にも描かれています。1955年、「ワシのマーク」が描かれた時代には、もちろんインターネットもスマホもありません。そのなかでイメージされた「ワシ」には、アメリカから入ってきたいろいろな文化のインパクトが及んでいるのかもしれません。ポップでかわいいです。

とりをあつめて(その39)

「消火栓のコサギ

先日、小雨の降る姫路を散歩しているとき、足元に鳥を見つけました。消火栓のフタに描かれているのは、姫路市の花である「サギソウ」と、同じく姫路といえばの「シラサギ」です。

この「シラサギ」には冠羽(頭に生えている飾り羽)があるようです。「シラサギ」というのは特定の鳥を指すわけではなく、「白いサギ類」の総称で、ダイサギチュウサギなどがいます。この中で、冠羽が生えるのはコサギのみ、それも夏羽(繁殖羽)のコサギだけです。

個体差はあるかと思いますが、早春、2月くらいから繁殖羽(繁殖期に向けて、雌へのアピールなどのために見た目が変わる)になっているコサギを見かけることがあります。名前が「夏羽」なのでややこしいですが、真夏には繁殖を終えて「冬羽」へと移ろい、冠羽は抜け落ちます。つまり、コサギに冠羽があるのは2月ごろ~7月ごろだと思います。

一方、「サギソウ」は夏の花で、開花期は7月~9月とのこと。というわけで、このフタの光景は、7月なら見られるかもしれません。

【おまけ①】
姫路駅の近く、船場川にかかるいくつかの橋の中に「白鷺橋」というものがありました。

 

【おまけ②】
ついでに、神戸市の消火栓のフタも。ノーマル1種と絵柄入り3種を見たことがありますが、絵柄入りにはどれも、カモメのなかま(季節的にはウミネコか?)や風見鶏などがいます。

神戸市・消火栓のフタ(Ⅰ)

神戸市・消火栓のフタ(Ⅱ)

神戸市・消火栓のフタ(Ⅲ)





 

とりをあつめて(その38)

「缶ビールのクロツグミ

(その37)のつづき
あまりにもいい天気だったので、そのへんにあった酒販店に寄ってビールを買うことに。思いのほかビールの種類が豊富で、せっかくなので、鳥がいるものを探しました。ということで見つけた、DHCのビール。化粧品のメーカーがビールまでつくっていたことにも驚きですが、何と言ってもかわいいクロツグミ。腹の模様を無くせばシロハラ、何本か線を入れるとツグミイソヒヨドリにもなりそうですが、絶妙にクロツグミ。おかげで最高の昼下がりでした。

 

とりをあつめて(その37)

「高架橋のコウノトリ

天気のよい日に、近所をふらふらしていて行き着いた公園。明石海峡大橋の開通を記念してつくられたらしい。敷地のほとんどが、高速道路の高架下にあり、不思議な感じ。大規模な開発の痕跡、だだっ広い風景、緑と青とコンクリートが入り混じったような色味を眺めていると、なんとなく、瀬戸内海に浮かぶ島に来たような気分になります。

少しでも自然との折り合いをつけるためか、高架橋の脚の部分に、とりが描かれていました。水鳥の飛翔の姿は、まず首と尾を見ます。たとえばサギ類は、首がくいっと曲がっていますし、ウのなかまは(ほかの水鳥と比べて)尾が長いです。ガン・カモ類やトキ・ツルのなかまは、いずれも首の方が長く、尾は短めに見えるのですが、それぞれ翼の形やクチバシの長さ、足の見え方などが異なります。

こちらの絵は、「首が長く尾が短い」「クチバシも長め」「翼の先端がとがっていない」そして「ここは兵庫である」ことを考えると、おそらくコウノトリでしょうか。コウノトリの特徴である長い足は描かれていませんが、かわりに橋の脚がすらっと長く、あじさいがきれいに咲いているようです。

 

とりをあつめて(その36)

『ぬすまれた宝物』

ウィリアム・スタイグ 作
金子メロン 訳

立ち寄った本屋さんの古本コーナーから見つけた1冊。いわゆる「ジャケ買い」で、表紙の鳥に惹かれました。こちら、ガチョウのガーウェイン。初版は1977年で、ずいぶん昔につくられた物語なのですが、変わらないものは変わらないというか、今日の自分にも染み入るものがあります。個人的には、ひとりの登場人物に、深く共感してしまう物語よりも、すべての登場人物の行動が、「なんかわかるかも」程度には頷いてしまう物語が好きで、これはまさにそんな感じ。お気に入りの1冊です。

ところで作者のウィリアム・スタイグ。買ったときには「どこかで聞いたことあるような、ないような……」という名前でしたが、ある日ふと、「あ!」と。大好きなCDのジャケットのイラストを描いた人でした。エピック・イン・ジャズの猫ジャケシリーズ。そのうちの1枚『ザ・ハケット・ホーン』も、やはり同じく、店でたまたま見つける⇒「ジャケ買い」⇒好きになる、の流れでした。こういうの、たまらないです。